蒼風閑語

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新嘗祭

昨日23日はまず「勤労感謝の日」で、且つ二十四節気の一つ「小雪」でもあり、又「二の酉」でもありました。

では「勤労感謝の日」について『国語大辞典 第二版』(学習研究社)から見て行く事にしましょう。

【きんろう‐かんしゃ‐の‐ひ】 勤労感謝の日

国民の祝日の一つ。勤労をたっとび、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう日。11月23日。 〔参考〕もとの「新嘗祭(にいなめさい)」に当たる。

ほほう、かつては「新嘗祭」と呼ばれていたと。では折角なのでこちらも見ておきましょう。

【にいなめ‐さい】 新嘗祭

宮中行事の一つ。11月23日(昔は、陰暦11月の第二の卯(う)の日)に、天皇がその年の新穀を天地の神に供え、自身も食して収穫を感謝する祭事。

ふむふむ。でもそもそも「新嘗」というのがよく判りません。もう少し調べてみましょうか。『古語大辞典』(小学館)の【にひ‐なめ】の「語誌」欄にはこんな記述があります。

「にひ」は新穀すなわち初穂の意で、神に献る食物としての「贄(にへ)」に通じ、「なめ」「なひ」「なへ」は「饗(あへ)」で、神と共食する意。従ってその起源は「贄の斎(い)み」で、神に生贄を奉る物忌みの祭りであった。

ふうむ、どうもより重きを置くべきなのは「新」よりも「嘗」の字の様です。ではもう一押し『漢和大字典』(学習研究社)も見てみましょう。【嘗】の「解字」欄にはこうありました。

嘗は「旨(うまいあじ)+音符の尚(のせる)」の会意兼形声文字。尚(上に乗せる)や賞(上に持ちあげる)と同系で、食べ物を舌の上に乗せて味をみること。転じて、ためしてみる意になり、さらに、やってみた経験が以前にあるという意の副詞となった。

なるほど。どうやら新たにお供えした食物を神様と一緒に“試食”してみるのが「新嘗」の本義と言っても良さそうな感じです。

何だか「勤労感謝の日」から随分世界が広がってきました。国語辞典・古語辞典・漢和字典の3つだけでも、まるっきり未知の領域だったものが次第に詳(つまび)らかになって行く醍醐味は充分に味わえる、という事ですね。