蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

この一冊・この一枚

今日6月13日は私の誕生日なので、例によって「この一冊・この一枚」と題して、特にお薦めする書籍とCDを1点ずつ御紹介しておきたいと思います。

「この一冊」

 ・R.P.ファインマン著『ファインマン物理学』(岩波書店

もうかれこれ10年近くも前になるでしょうか、およそ1年半程をかけてこの全5巻からなる“古典的名著”を読み上げた事が、物理学の世界に足を踏み入れる一つの大きなキッカケとなりました。

量子力学のシッカリした入門書は無いかと探していたところへちょうど目に付いたのが第Ⅴ巻の『量子力学』。一旦読み始めると、難しくて書いてある事のほとんどは理解出来ないのに、何故だか後が気になって読むのを止められない。

そして、読んでいると第Ⅱ巻『光・熱・波動』への参照指定が沢山出て来るのでそちらも読んでみたところ、コレが何と言うのか・・・“ちょっと困ってしまう位に面白かった”のです。

“目で物を見る・肌で温度を感じる・耳で音を聞く”といった「身体感覚」に直結する物理現象が、とにかく複眼的にあらゆる方向から“直観的かつ厳密に”解説されて行く・・・。こんなスリリングな知的体験はちょっと他の本では味わう事が出来ません。

後は文中の参照指定に従ってそれこそ「芋蔓式」に、第Ⅰ巻『力学』・第Ⅲ巻『電磁気学』・第Ⅳ巻『電磁波と物性』と、全ての巻を読み上げる事になりました。

今でも書架の中で一番良い場所を占め、ひとたび手に取るとなかなか途中で止める事が出来なくなってしまう、まるで魔法のような魅力を持った大部です。

「この一枚」

 ・"The Song Remains the Same" : Led Zeppelin

初めて聴いた Led Zeppelin の作品はセカンド・アルバムの“Ⅱ”だったのですが、凡そ「衝撃度」という点で質量共に大きく上回っていたのが、当時の「最新作」だったこの2枚組ライヴ・アルバムでした。

とにかくオープニングの "Rock and Rll" の冒頭を飾る“あの”イントロだけで、「すっかりヤられてしまった」経験をお持ちの方も多いかと思うのですが、そこで一体何が起こっているのかも俄(にわ)かには理解し難い程の、圧倒的な「音の質感と質量」。

このアルバムを可能な限りのフル・ボリュームで聴いた後は、どんなアーティストのどの作品であれ、少なからず「物足りなく」感じてしまうのは、恐らく私だけが持っている感情では無い筈です。

あれこれとゴタクを並べるよりもとにかく耳にしてしまえば「一聴瞭然」。・・・というより、むしろゴツンゴツンとぶつかってくる「音の塊」と否応無く対峙させられる事になる“危険な作品”と言うべきなのかも知れません。