蒼風閑語

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欧米の旅・下

今日「神無月の朔日」は、澄んだ空・白い雲・爽やかな風・・・と“秋の良き日”の条件が揃い踏みの、とても気持ちの良い一日でした。

そんな何をするにもうってつけの今日、“野上彌生子全集”の第十七巻『欧米の旅・下』(岩波書店)を読了しました。

上巻から引き続いての旅程は、イギリス(後半)→オランダ→スウィス→フランス→ドイツ→ハンガリー→ドイツ(再訪)→スペイン→アメリカ、というもの。

政情不安の高まる中、まるで逃避行の様な有り様となってしまった帰路の顛末は、スペインとアメリカの間に「落人日記」なる一章を設けてその様子が綴られています。

それにしても、第二次世界大戦の開戦を目前に控えたまさに“風雲急を告げる”時代に、こんなにも明るく朗らかで文字通り“闊達な”紀行文が書き記されていた事に、ある種の驚きと感動を感じずにはいられません。

硬質なルポルタージュとは趣を異にした穏やかな筆致の中から、女性ならではの視点で捉えた当時の社会情勢が鮮やかに見えて来る様な、一級の紀行文学であったと思います。

さぁ本書に引き続いては全集の第十五巻、『紀行・一』(「みちのくの旅」「台湾」「私の中国旅行」収録)に取り掛かる予定です。

欧米の旅 (上) (岩波文庫)

欧米の旅 (上) (岩波文庫)

 
欧米の旅 (中) (岩波文庫)

欧米の旅 (中) (岩波文庫)

 
欧米の旅 (下) (岩波文庫)

欧米の旅 (下) (岩波文庫)