蒼風閑語

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量子力學 原書第4版

数年前に買い求めてから「読んでは中断読んでは中断」を繰り返していた、P.A.M.ディラック著『量子力學 原書第4版』(岩波書店)を読了しました。

この第4版が書かれたのが1957年で、その日本語版である本書の出版が1968年の事。原書の方の「第1版」が出たのは1930年となっていますから、何と80年もの長きに渡って読み継がれているロングセラーです。

本書の発刊自体は’68年とさほど古くはないので仮名遣いは現代のものに改められているのですが、漢字表記については古い版を踏襲して旧字体がそのまま使われています。

それが原因となって本書の通読を敬遠される方もいらっしゃるという事なのですが、個人的な感想としては、数ある理数系の翻訳書の中でも屈指の「名訳」のひとつではないかと思いました。

ちゃんと文章の意味が通っているか、読者に誤解を与えそうな表現はないか、著者の意図を正しく伝えられているか・・・作者が使う専門用語や言い回しの“微妙なニュアンス”まで残らず理解出来る力量があった上で、更にこれらの点に意を尽くしたからこそ出来上がった「名訳」であり「名著」なのでしょう。

朝永振一郎・玉木英彦・木庭二郎・大塚益比古・伊藤大介・・・それにしても、こうして名前を列挙しただけでも“モノスゴイ顔触れ”の翻訳・執筆陣では、あります。

量子力学 原書第4版

量子力学 原書第4版