蒼風閑語

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量子力学の数学的基礎

2006年の“東京国際ブックフェア”で買い求めて以来書架の片隅でじっと出番を待っていた、ジョン・フォン・ノイマン著/井上健・広重徹・恒藤敏彦3氏の共訳による『量子力学の数学的基礎』(みすず書房)をようやく読了しました。

物理界から湯川秀樹氏、数学界からは彌永昌吉氏という錚々たる顔触れの豪華な序文を読むにつけ、初版の発行された1957年当時にはまさに「待望の翻訳!」だったのだろうなと察せられます。

しかも原著の刊行となると、ノイマン氏がまだ29歳だった1932年にまで遡(さかのぼ)るという事ですから、本書がいかに長く読み続けられているロングセラーであるかが判るというもの。

基本的にはヒルベルト空間論を論旨の中心に据えた、関数解析的な色彩の濃い解説ぶりという事になるのでしょうが、全体を大きく見ると“数学的な部分”と“物理的な部分”がキチンと書き分けられている様に感じられました。

その辺りを指したものなのでしょう。「序」の中で湯川秀樹氏は本書の特徴を、こんな言葉で書き表しています。

 “実際 Neumann は本書において、量子力学の数学的な基礎を明らかにしたばかりではなく、観測の問題の精密な分析をも行い、更に進んで量子統計力学の再構成までも試みた。”

ちなみに本書を読み進める間、新井朝雄氏の『ヒルベルト空間と量子力学』(共立出版)を、“現代的な言葉によるサブテキスト”として常に傍らに置いていた事を申し添えておきましょう。

量子力学の数学的基礎

量子力学の数学的基礎

 
ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16)

ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16)