蒼風閑語

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地震

半年ほど前に隣町の古書店で買い求めた、和達清夫氏の『地震』(中公文庫)を読了しました。

元々は鐵塔書院という出版社から出ていた“鐵塔科学叢書”というシリーズ中の一冊として1933年(昭和8年)に刊行されていたものを、それからちょうど60年後の1993年に改めて文庫化したもの。

著者の和達氏といえば、ここでよく引用する『最新気象の事典』(東京堂出版)の監修者なのであって、旧中央気象台の台長さんとしての認識しか持ち合わせなかったのですが、本書を読んで長く地震学を御専門になさっていたのだという事が判りました。

当然ながらプレート・テクトニクス理論が登場する遥か以前の著述ですので、地震の発生メカニズムなどについては“古式ゆかしい”感じもするのですが、地震に材を取った「振動・波動論」の一般向け解説書と見れば、いささかも古びたところはありません。

数式を一切使わず、豊富な図版と巧みな語り口だけによって、難解な理論を判り易く伝える力量は、まさに“通俗書かくあるべし”という一つのお手本を示している様でもあります。

こんな風に面白く書かれた科学の本を、ふと手に取ってはつらつら読み進める時ほど、シアワセな時間はありませんねぇ・・・。