蒼風閑語

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収奪された大地

2ヶ月程前に神保町の古書店で見つけて買い求めておいた、エドゥアルド・ガレアーノ著/大久保光夫訳による『収奪された大地―ラテンアメリカ五百年』(藤原書店)を読了しました。

先に読み終えた『火の記憶1.誕生』(みすず書房)ではその独特な作品世界にすっかり魅了され引き込まれましたが、本書は著者本来のフィールドとも言えるジャーナリストとしての力量が遺憾無く発揮された、大変な労作であり力作でした。

内容については本書のタイトルが全てを語っているのですが、1492年クリストーバル・コロン(クリストファー・コロンブス)によって「発見」された南米大陸が、それ以降現在に至るまで、ヨーロッパ人達によっていかに侵略・強奪・蹂躙され続けて来たのかが克明に記されています。

本文だけでも400ページを超える上50ページに及ぶ詳細な「原注」も添えられており、最初手に取った時にはいささか充分過ぎるボリュームの様な気がしていましたが、ひとたび読み始めるとページを繰るスピードが鈍る事はありませんでした。

それにしても本書を読み進んで行く程に、ここに書かれているのは本当に「氷山の一角」に過ぎないのだろうなという事が“容易に”察せられます。

それほど本書に描かれている、北米やヨーロッパ諸国で「先進国」と呼ばれている国々のこの大陸に対する仕打ちは、極めて周到で巧妙でありまたウンザリする程に執拗かつ徹底的です。

ラテンアメリカ諸国の辿った過酷な歴史とシビアな現状を伝える余りにも“重い一冊”ですが、巻末の「訳者あとがき」で大久保氏が引用なさっていた、旧西ドイツのヴァイツゼッカー元大統領が語ったというこの言葉を、今こそ反芻してみる必要があるのでしょう。

 “過去に目を閉じる者は現在に対しても盲目である。非人間的なことを記憶することを拒む者は、だれであれ新しい伝染病にかかりやすい。”

収奪された大地―ラテンアメリカ500年

収奪された大地―ラテンアメリカ500年