完全な真空
7月の“東京国際ブックフェア’09”で買い求めてから思い付いた時に1篇また1篇と読み継いで来た、スタニスワフ・レム著/沼野充義・工藤幸雄・長谷見一雄共訳による『完全な真空』(国書刊行会)を読了しました。
架空のライターによる架空の本についての16本の書評が、「よくもまぁ」と言うしかない程の“圧倒的完成度”でこれでもか!とばかりに綴られています。
そのバカバカしくも真剣な筆致はまるで“効き目の強過ぎる劇薬”の様で、1冊を一息に通読してしまうなど「とんでもない!」といった雰囲気でした。
どの作品を取ってもせいぜい20~30ページ程の短編に過ぎないのですが、内容はどれも頭の中に手を突っ込んで脳味噌を底から掻き混ぜられる様なものばかり。
本の内容云々よりも“ものすごく奇妙で面白い読書体験をした”という強烈な印象だけがいつまでも記憶に残る感じの、なかなか他書では得られない独自の感触を持った一冊でした。
あぁそうそう、カバーを飾っているマーク・コスタビなる御仁の手による装画も、何とも奇妙な味わいに溢れた「逸品」ですので、機会があったら是非手に取ってみて下さい。