蒼風閑語

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「集合」の話

1週間程前に神保町で見つけて買い求めていた、川尻信夫氏1972年の著作『「集合」の話』(講談社現代新書)を読了しました。

ここのところ妙に講談社現代新書づいているというか、4~5冊ばかり立て続けにこのシリーズからの成書を愉しんでいる気がします。

特に意識して収集しているつもりは無いのですが、本屋さんに行けば講談社現代新書のコーナーで何かしら手に取っている感じです。まぁそういう「時期」なのでしょうね。

・・・さて本書ですが、歴史と理論の両方に目配りをした非常にバランスの取れた見地から、集合論の成り立ちとそのアウトラインを判り易い言葉で解説した概説書でした。

落語の「根問もの」の話から始まって、まずは「無限」の概念を“どんどんいったらどうなるか”という素朴な疑問として捉えるところから始めるオープニングが既に秀逸です。

ここで著者の仕掛けた術中にハマってしまうと、後はただひたすら時間を惜しんでページを繰り続けることになってしまいます。かく言う私もそうでした。

抽象的でやや難解になりそうな所は巧みな「たとえ」でその本質的な部分だけをググッと掴み出して下さるので、読んでいて凡そ滞ったり淀んだりといった事がありません。

面白い面白いと夢中になって読み耽る内に、気が付いたらいつの間にか読み終わっていた・・・という幸せな読書体験の出来るなかなかに“稀有な”数学解説書だと思います。