蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

数学をきずいた人々

二週間ばかり前に神保町で見つけて買い求めていた、矢野健太郎氏1966年の著作『数学をきずいた人々』(講談社現代新書)を読了しました。

帯に印刷されたリード文によると、“数学の進歩をぐいぐいとおし進めた30余人の数学者をとりあげ、その魅力的な性格やかくれたエピソードをまじえながら、数学の思想の流れを解明した。『数学の考え方』の姉妹編”という事になります。

数学の全史をギリシア時代、16世紀、17世紀、18世紀、19世紀、20世紀と6つの時代に大きく分け、それぞれの時代に活躍した数学者の逸話を伝記風に書き連ねて行く・・・という形式でした。

読んでいて特徴的に感じたのは20世紀の数学者についてのセレクションでしょうか。本書で矢野氏がチョイスしているのはヒルベルト高木貞治アインシュタインという3名。

ヒルベルトに師事した高木貞治氏、そして高木とアインシュタインの両氏に師事した矢野氏、という師弟関係からまずこの3名に20世紀の数学を代表させ、そこへ繋がって行く系譜として各世紀の数学者が選ばれている感じでしょうか。

そのせいもあってか、短いエピソードの連なりの中にも全体を通底する大きな「流れ」の様なものが感じられ、読後にはまるで大きな大河小説でも読み終えた様な満足感がありました。

当該新書に収められている4点の矢野氏の著作の中から、読了したのは『数学の考え方』に続いて2冊目になるのですけれども、同氏の作品はいつどれを読んでも数学の面白さを再発見させて貰えます。