自選 谷川俊太郎詩集
今年の初めに新しく刊行されていた『自選 谷川俊太郎詩集』(岩波文庫)を通読しました。
谷川氏の作品については各種メディアから自然に目に入ってくるもの以外、殊更成書となったものに目を通した事はなかったので、本書が初めての読書体験となります。
ちょうどこのアンソロジーを読み始めた日の当欄で、冒頭に収められている作品「かなしみ」を引用しておいたのですけれども、そこからの全173篇を味わう旅は本当に愉しいものでした。
詩集なので、基本的にはすぐに手の届くところに置いて気が向いた時にページを開いて中の数篇を拾い読む・・・という形で読み進むのですが、これがもうほとんど「至福のひととき」。
既に2000篇を超えるという作品群の中から、作者自身の手によって更に吟味され選び抜かれた詩ばかりがズラリと並んでいる訳ですから、読み応えがあるのも当然といえば当然のことではあるのですが、それにしても愉しい。
何と言えばいいのかなかなか上手い表現が見つかりませんけれども、言葉のひとつひとつがまるで炊きたての新米の様に丸く膨らんで「立って」いる感じ・・・とでもすれば近いでしょうか。
何篇かの作品をを選んで音読してみると、この「言葉の感触の良さ」は際立ちます。そういえば谷川氏は作詞家としても大家なのでした。口に乗せて心地よいフレーズが満載されているのも道理と言えるのかも知れません。
これまでも結構好きだったつもりでしたが、本書を通読してすっかり「谷川ファン」になってしまったみたいです。