蒼風閑語

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放射線のほんとう

菊池誠氏と小峰公子さんの共著におかざき真里さんが挿画を付けた『いちから聞きたい放射線のほんとう』(筑摩書房)を読了しました。

ご実家が福島県にあり「間接的」に被災なさったミュージシャンの小峰さんが、友人であり音楽仲間でもある物理学者の菊池氏と交わしたチャット・トークをベースにした、対話形式による原子力放射線の解説書です。

全体は大きく2つの部に分かれており、第一部「放射線ってなんだろう」が原子や放射線そのものの性質について、第二部「放射線とわたしたち」が放射線が人間の体に与える影響についての “徹底的に判り易い” 解説となっています。

科学的な予備知識が一切なくても全く滞るところ無く読み進められ、しかも読み終えた後には放射線の本質的な部分がちゃんと理解出来るよう実に巧みに構成されており、読み手に敷居の高さを感じさせるところが微塵もありません。

それは実際に “何の予備知識もなかった” 小峰さんが菊池氏とネット上で交わした質疑応答が元になっているからに他ならず、都合の良い質問をしてくれる架空の生徒役を設定したお仕着せの「対話形式」とは自ずと異なったものになるのも道理でしょうか。

学習院大学田崎晴明氏が2012年に上梓なさった『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』(朝日出版社)と相互補完しつつ併せ読む事で、一般的なレベルで必要とされる放射線の知識はほぼ身に付く・・・と言って良いと思います。

東日本大震災から3年を経てようやく現れた「一般向け放射線解説書の決定版」といえるのかも知れません。