蒼風閑語

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カルメン

スペインのビセンテ・アランダ監督によって2003年に製作、翌04年に公開された映画『カルメン』を DVD で視聴しました。

スペイン・イギリス・イタリアという3国合作による文芸大作で、スペイン本国では1ヶ月で100万人を動員したという大ヒット作です。

7月7日の当欄で入手に至った経緯をお知らせしておいたのですが、この土日にようやく全編を愉しんだ・・・という次第。

さてこの作品のストーリーは、アレヴィとメイヤックによるオペラ版の台本とは幾分異なり、メリメが執筆した原作により忠実なものとなっていました。

世界中で知られているあまりにも有名なお話ですからヘタな造りだと学芸会扱いされかねないところですけれども、その点についてこの作品はもう圧倒的な完成度でした。

登場人物には全て「コレしか無い!」というキャスティングが施されているのですが、とにかく特筆すべきはヒロインを演じたパス・ヴェガの魅力に尽きるのではないかと。

脳内イメージとして持っていたカルメン像はずっとマリア・カラスが不動の地位を占めていたのですが、ここへ来てどうやらパス・ヴェガによってすっかり「上書き」されてしまいそうな勢いです。

もちろん相手役のホセを演じたレオナルド・スパラグリアも素晴らしい演技で、感情の襞(ひだ)の隅々までがまるで手に取る様に伝わって来る様な力演ぶりでした。

いやこれは優れた映画です。商業用ソフトなので売れ行きによって品切れになるのは仕方の無い事ですけれども、無粋極まりない「R-18」指定などというもので本作を視聴する機会が制限されてしまうのは実に勿体無い事ではないかと思います。

より「真っ当な」形での再発を強く希望しておきたい一本・・・と言えそうです。