マゼール氏のこと
一昨日、指揮者ロリン・マゼール氏の訃報に接しました。
彼が才能に溢れた偉大なマエストロであった事に異論の余地は無いでしょう。とにかく明晰でダイナミクスをハッキリと付ける音作りは、誰にも受け入れられ易いものだったのではないでしょうか。
個人的な思い出を言えば、自分で最初に買い求めたクラシックのレコードがマゼール指揮クリーヴランド管弦楽団によるムソルグスキー『展覧会の絵』だったので、同氏の演奏にはやはり相応の思い入れや愛着がありました。
このディスクはテラーク・レーベルからリリースされていた優秀録音盤で、カップリングの『禿山の一夜』と併せて今聴いても本当に素晴らしいパフォーマンスが収められています。
ベルリン放送交響楽団を振ったJ.S.バッハの『管弦楽組曲』も忘れられない録音。バロック期の作品は今や古楽器で演奏するのがメイン・ストリームになっていますが、1965年のこの演奏はモダン・オーケストラによるこの曲の解釈の規範ともなり得る名演でした。
更にもう一つ挙げておくとすれば、1975年クリーヴランド管弦楽団とのガーシュウィン『ポーギーとベス』のセッション録音でしょうか。このオペラともミュージカルともつかない不思議な作品を実に端正に感動的に仕上げた、文字通りの「不朽の名作」。
そして何より忘れられないのは、ショルティ没後初となったシカゴ交響楽団との来日公演。この時メイン・プログラムだったブラームスの『交響曲第1番』の重厚な響きは、未だに強い印象として記憶の中に残っています。
マゼール氏がクラシック音楽の世界に遺した足跡を仔細に辿り始めると本当にキリがない位なので、今夜は取り敢えず純粋に個人的な思い出をいくつか書き連ねてみた次第です。
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