蒼風閑語

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竜巻のふしぎ

気象予報士森田正光氏と森さやかさんによる共著『竜巻のふしぎ ― 地上最強の気象現象を探る』(共立出版)を読了しました。

巻頭の「はじめに」によると著者のお一人である森田氏は、1973年に同じ共立出版から刊行された藤田哲也氏の著作『たつまき・上』を読んで感銘を受け下巻の出版を心待ちにしていたところ、ついに下巻が刊行されないまま藤田氏は鬼籍に入られてしまったのだそうです。

つまり本書は、森さんという共著者を得て森田氏が御自身なりの『たつまき・下』を上梓なさった「こだわりの一冊」・・・ということになるのかも知れません。

さて本書は大きく5つの章に分かれており、内訳は第1章「竜巻の基本」、第2章「竜巻の姿と動き」、第3章「竜巻の発生」、第4章「竜巻の被害と身の守り方」、そして終章の「藤田哲也伝」という流れ。

さらに各章は8〜9個の節に分かれそれぞれの節が独立した Q&A の形式となっていますから、基本的にどこから読み始めても良いとは思いますけれども、出来れば一度は通読してみることをお奨めしておきたいと思います。

第1章から第4章までの解説で竜巻という現象の「特異性」をよく認識しておく程、終章の短いバイオグラフから受ける感銘が大きくなるのではないかと。

何れにせよ、竜巻についての好適な一般向け解説書がほとんど刊行されていない現状にあって、現象の発生・発達プロセスから防災的な見地による対応策までを簡明に解き明かした本書の存在意義は極めて大きいと言えそうです。

これで藤田哲也氏の筆による『たつまき・上』が無事復刊の運びとなれば、文字通り「言うことなし!」といったところかも知れませんね。