イベリコ豚を買いに
野地秩嘉(のじ・つねよし)氏の近著『イベリコ豚を買いに』(小学館)を読了しました。
“イベリコ豚とはスペインのあるイベリア半島固有の畜種、イベリカ種のことを指している (中略) つまり、イベリコ豚とはイベリカ種の豚のことだったのだ”(本書7〜8ページ)
イベリコ豚とは “イベリコ地方の豚” というイミではなかった・・・というほとんど「雑学レベル」の事実に気が付くところから本書は始まります。
この「高級豚」に興味を持った著者はスペインの生産者を訪ねて取材をしようと試みますが、折からの口蹄疫騒動の影響で訪問を拒否されてしまうのでした。
そこで著者が思い付いたのが「じゃあイベリコ豚を買っちゃえ」という破天荒なアイデア。購入するとなれば関係は生産者と購買者。商談のためには面会だって不可欠になるだろう。
・・・というイントロダクションから、実際にイベリコ豚を原料にした加工品を開発し販売にこぎつけるまでのプロセスを描いたドキュメンタリーでした。
とはいってもありがちなビジネス・パースン向けの啓発書ではなく、スペイン在住のイベリコ豚生産者と日本へ輸入しようとする著者、計画に協力する輸出入業者と食肉加工業者と料理店主・・・それぞれの思惑と情熱が交錯するヒューマン・ドキュメントといった趣き。
畜肉の輸入と加工品の開発・販売という分野においてはアマチュアの著者がプロフェッショナルの面々から教えを受け、企画では「シロウトならでは」ともいえる柔軟な発想で決定的な商品化のアイデアを捻出する。
“ものを作る” という作業と “ものを売る” という行為の「基本と本質」を思い出させてくれる稀有な一冊です・・・と言うより、読めばとにかく面白いので是非御一読を。