蒼風閑語

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新聞協会のシンポジウム

千代田区にある一橋大学一橋講堂で開催された、一般社団法人日本新聞協会の主催によるシンポジウム『報道とつくる「知」の空間』に出席して来ました。

登壇なさったパネリストは、日本創成会議座長で元総務相増田寛也氏、作家で文字・活字文化推進機構副会長の阿刀田高氏、ニワンゴ代表取締役の杉本誠司氏、精神科医で立教大学教授の香山リカさんという4名。

それに司会進行役として毎日新聞東京本社執行役員編集編成局長の小川一氏を加えた計5名による豪華なプログラムです。

まず口火を切ったのは増田氏による「人口減少社会を迎えて」と題された報告から。新聞の購読者数云々を論じる前に “そもそも論” として日本の人口自体が今後どれほど減少する見込みなのかを解説した、かなりシビアな内容を含むレポートでした。

推計によると、2040年には全国896の市区町村が「消滅可能性都市」に該当。うち、523市区町村は人口が1万人未満となり、消滅の可能性がさらに高い。

ここでいう「消滅可能性都市」とは2040年の時点で “20〜30代の女性が半減すると予想される地域” を指すらしいのですが、別の資料では2050年には日本全体の人口も1億を割り込んで9708万人、その内の高齢者割合は38.8%に達するだろうというデータも提出されていましたから事態はより深刻と言えそうです。

この報告に関してだけでも数時間の討論が必要になりそうな内容でしたが、次の阿刀田氏は山梨県の図書館で実施なさっている作家の講演会などの試みについて述べ、杉本氏がインターネットの最前線にいらっしゃるお立場から新聞への厳しい提言を、香山さんは御自身が学生と接する中で感じた現代的な「知」の在りようを柔らかい言葉で論じました。

続いてテーマは「新聞に向ける要望」へと移り、増田氏が新聞・図書館・書店の衰退は「知の拠点の喪失」に繋がると警鐘を鳴らし、阿刀田氏は新聞や書籍は「情報+思索」の為のツールとして存在意義があるとし、優れた記者や編集者の重要性を指摘します。

かたや杉本氏はニコニコ動画と連動する地方イベント開催時に感じた地方自治体の他力本願な思考をやんわりと批判し、最後に香山さんは「新聞は原理主義者たれ」と日和らない “一本筋の通った強さ” を新聞に求めました。

全体に非常に濃密で意義深いシンポジウムでしたが、会の締めにパネリスト全員から一言ずつ・・・という段で増田氏が仰られた、「新聞の購読料は民主主義を支えるコストである」という文言がとても印象深く心に残った事を申し添えておきましょう。