蒼風閑語

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神保町の記事

今日(4月2日)付の『朝日新聞』朝刊の第2東京面に掲載されていた、神保町を紹介する連載記事の第1回。

内容は当然の事ながら面白くて、隅々までジックリと読み込んでしまいました。何しろ記事の書き出しから極めて秀逸です。ちょっと引用してみましょうか。

 一冊一冊、半透明のパラフィン紙に包まれた本、本、本・・・。 すれ違えないほどの通路。物欲しそうな顔の人たち。

 神保町の風景である。住所は千代田区神田神保町

毎週毎週飽きもしないでこの街に通っている身からすると、もう最初の2行だけで心はかの地の古書店へと瞬間移動してしまいます・・・暫し引用を続けましょう。

 記事の最初に登場する作家でエッセイストの石田千さんによる次のエピソードに、思わず膝を叩き何度も首肯してしまったのは恐らく私だけではない筈です。

 本との付き合い方を教えられた。身の丈にあわない高額の全集を買いたいと言ったときは、単行本を一冊ずつ集めたほうがいいと諭された。「客にあった売り方をされたのでしょう。本当に本を好きでなければできない仕事だと思います」

古書店街のメインストリートが靖国通りの片側だけに集中しているのは何でだろう・・・とは一度ならず考えたことがありましたが、この疑問も氷解しました。

 1923(大正12)年9月の関東大震災による火災で街は消失したが、年内にはバラックで復旧した。昭和初期にはコンクリート建築に建て替えられ、靖国通りの南側にびっしり書店が張り付く現在の街並みができた。

 理由がこの街らしい。「西日で本が日焼けしないように」。

記事の最後を締めていたのは、1875(明治8)年創業の老舗「高山本店」4代目高山肇氏によるコメント。この街に向けた司馬遼太郎氏の言を引いて説得力がありました。

「司馬さんは神保町のことを『世界一の物学びのまち』と言いました。ネットで情報はとれる時代ですが、『本当の知識はこの街に来ないと得られないぞ』と言っているように聞こえます。知識を尊ぶ気持ちを皆が持っている、それはいまも変わっていません」

・・・当該シリーズはこれから4回に渡って毎週木曜日に掲載されるとの事。卯月の朝に届けられる「週末前の愉しみ」となりそうです。