蒼風閑語

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ウィズ・ザ・ビートルズ

松村雄策氏2012年の著作の文庫化『ウィズ・ザ・ビートルズ』(小学館文庫)を読了しました。

ビートルズのイギリス盤、つまり1962年〜1970年迄の8年間にリリースされた14作のオリジナル・アルバムを、松村氏なりの視点で発売順に解説して行こう・・・というコンセプトです。

従って当然の事ながら全14章という構成になる訳ですけれども、本書では2作品ごとに著者自身とビートルズに纏わるエッセイが挟み込まれています。

タイトルにもなっている『ウィズ・ザ・ビートルズ』の後には「誰もビートルズを知らなかった」。ロックというジャンル自体が日本ではまだ耳新しかった時代、ビートルズといえども決して一般的な知名度は高くなかったという事実。

ビートルズ・フォー・セール』の次には「ビートルズが走って来た」。映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』への深い共感と父親との思い出。これは心に沁みる一編です。

ラバー・ソウル』に続いては「まだビートルズではなかった」。タイトルが示している通り、デビュー前の音源を収めた3作品を採り上げています。ちなみに三つ目の『ライヴ・アット・ザ・スタークラブ』は1977年の発売当時『デビュー!ビートルズ・ライヴ’62』という邦題でアナログ2枚組でした。

ベスト盤の『オールディーズ』の後には「ビートルズを見た ― 一九六六年七月一日・日本武道館」。当時武道館のアリーナは解放されなくてオーディエンスが入場出来たのはスタンド席だけだった・・・というのは知りませんでした。今となっては何とももったいない話ですよね。

そして『マジカル・ミステリー・ツアー』と『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』の間には「ジョンとポールがいた」。リヴァプールという田舎町にジョン・レノンポール・マッカートニーという2人の “圧倒的な天才” がいて、しかも一緒にバンドまで作ってしまったというとんでもない奇跡。

最終章『レット・イット・ビー』の後ろに添えられた「そしてビートルズ北極星になった」には、バンド解散後にリリースされた編集アルバムがどっさりとリスト・アップされています。

尚、巻末の「文庫版のあとがき」には『オン・エア〜ライヴ・アット・ザ・BBC Vol.2』の発売も追記として書き添えられていました。この辺りも “当然書いておく” というスタンスが松村氏ならではでしょうか。

・・・とにかくビートルズへの真っ直ぐな愛情に満ち溢れている一冊です。最初に読むディスク・ガイドとしてもお薦め出来るものだと思いますので、是非御一読を。

ウィズ・ザ・ビートルズ (小学館文庫)

ウィズ・ザ・ビートルズ (小学館文庫)