蒼風閑語

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プランク・ダイヴ

グレッグ・イーガン著/山岸真氏の編訳による『プランク・ダイヴ』(ハヤカワ文庫)を読了しました。

2011年に刊行された日本独自編集の短編作品集で、収録されていたのは2008年の「クリスタルの夜」、1990年「エキストラ」、2007年「暗黒整数」、同年の「グローリー」、1995年「ワンの絨毯」、1998年「プランク・ダイヴ」、そして再び2007年の「伝播」という7篇。

物理学や数学への横溢する知識を縦横に駆使した作風は本書でも健在で、科学的なリアリティに裏打ちされたストーリー展開は、どこを切っても上質な知的興奮に満ち満ちたものです。

個人的な好みとしては「暗黒整数」と「ワンの絨毯」が両篇とも甲乙付け難く、表題作の「プランク・ダイヴ」が次点かな・・・といったところですが、もちろん全ての収録作が無類の面白さである事は言うまでもありません。

特に「暗黒整数」は、ブルーノ、アリスン、ケイト、キャンベル、ユワン、そしてサムという登場人物のキャラクター設定がクッキリしていて本当に魅力的。

ヒューゴー賞第3位、ローカス賞第3位、アシモフ誌読者賞受賞、星雲賞受賞、SFマガジン読者賞第2位・・・といったそうそうたる受賞歴も「むべなるかな」と言えそうな完成度でした。

巻末の「編・訳者あとがき」によると当作品は既刊短篇集『ひとりっ子』(ハヤカワ文庫)に収録された「ルミナス」の続篇ということなので、こちらも日を置かずに是非味わってみたいと思っています。

・・・いや、それにしても面白い。イーガンの著作群にはまだ手を染めたばかりなので、これから沢山の未読本を愉しめるのだと思うと本当にワクワクします。

こういう優れた作家と同じ時代を生きていられるというのは、つくづく「僥倖」というものですよねぇ。

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)