蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

金星

あぁ、暑い暑い。こんな蒸し暑い夜には、今読み進めている真っ最中のエドゥアルド・ガレアーノ著/飯島みどり訳『火の記憶1.誕生』(みすず書房)から、お気に入りの一節を抜き出して味わってみる事にしましょう。

さあさあ、冷たいビールに枝豆とキュウリでも用意して・・・。

 『金星』

背中の曲がった母なる月は、息子にこう頼んだ。

―おまえの父親は一体どこにいるものやら。私の便りを届けておくれ。

息子は火という火のうち、とりわけ激しく燃える火を求めて旅に出た。

太陽がお気に入りの葡萄酒を飲み、お気に入りの女たちと小太鼓に合わせて踊るはずの正午(まひる)どき、だがそこに彼は見つからなかった。地平線や冥界を探し歩いた。タラスコの民の太陽は、その四つの家のいずれにもいなかった。

金星はなおも父を追って天空を駆け続ける。だがその登場は、きまって早すぎるか、さもなければ遅すぎる。

今日29日はちょうど半月になっていますが、つい先日までの弦月だとまさに“背中の曲がった母なる月”の風情でしょうか。

それにしても、金星が今「明けの明星・宵の明星」などと呼ばれているという事実、あれはただ単に“間が悪いヤツ”というだけの話だったのですねぇ・・・。

火の記憶〈1〉誕生

火の記憶〈1〉誕生