蒼風閑語

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地球をめぐる風

しばらく前にネット古書店で見つけて買い求めていた、廣田勇氏1983年の著作『地球をめぐる風―私の気象物語』(中公新書)を読了しました。

小倉義光氏の『一般気象学 第2版』(東京大学出版会)を始めとする多数の気象関連書籍に参考図書として挙げられていたので、ずっと機会があれば読みたいなと思っていた一冊だったのです。

それだけに予めより相応の期待感は持っていたのですが、ひとたび目を通し始めると世評の高さにも「なるほど」と納得出来る、万全の判り易さと面白さでした。

小倉氏の一般向け解説書である『大気の科学』(NHKブックス)を読んだ時にも感じていた事なのですが、ある事柄をその根底まで真に理解しているからこそ、そしてそうでなければ書けない種類の判り易さというものが、確かにあるのです。

本書における廣田氏の筆致もまさにその域に達したもので、読中には文字通り碩学による“手だれの名講義”を聴いている様な、独特な雰囲気がありました。

基本的には気象学の中の「大気大循環論」というジャンルにおける発見・発展史を述べているのですが、著述の端々に“科学的なものの見方”についての著者なりの考えが散りばめられており、それらの全てが示唆と含蓄に富んでいます。

小冊でもありそれこそアッという間に読み終えてしまったのですが、そこはやはりと言うべきなのでしょう。もう随分前に読んだ廣田氏のテキスト『グローバル気象学』(東京大学出版会)を、再び読み返してみたくなりました。