蒼風閑語

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日本の色を歩く

染色家の吉岡幸雄氏2007年の著作『日本の色を歩く』(平凡社新書)を読了しました。

テーマとなる色ごとに章が立てられており、その内訳は第一章「朱の色を歩く」、第二章「赤の色を歩く」、第三章「藍の色を歩く」、第四章「黒の色を歩く」、第五章「白の色を歩く」、第六章「黄と黄金の色を歩く」、第七章「紫の色を歩く」という流れ。

書籍編集や広告のお仕事から植物染屋「染司よしおか」の五代目当主となられた吉岡氏だけあって、染色家としての「主観」と編集者的な視点から見た「客観」とがバランスよく使い分けられている、という印象です。

染色家当主というお立場からすれば、専門的なあれやこれやを言おうと思えばいくらでも言えてしまうところを程良く切り上げて、話題のエッセンスだけをサラリと汲み上げ更にググっと凝縮した・・・とも言えるでしょうか。

著者が日本中・世界中の色や染物の産地を訪ねる「紀行文」として読むことも出来ますので、傍らに地図帳でも携えておけば本書を読む楽しさが倍増するかも知れません。

ただ一点惜しむらくは、これは新書という体裁もあっての事でしょうけれども、カラーページは口絵の数葉の写真だけしかありません。

「色」を語る本に色が付いてないというのはなかなか寂しいものなので、私は吉岡氏が2000年に上梓なさっている『日本の色辞典』(紫紅社)を傍らに置いて、じっくり色目を愉しみながら読み進めました。

日本の古くからの染色技術を確かめに美術館か博物館へでも足を運んでみようかな・・・そんな気にさせられる “味わい深い” 一冊といえそうです。

日本の色を歩く (平凡社新書)

日本の色を歩く (平凡社新書)