蒼風閑語

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秀吉と利休

先だって読み終えた『欧米の旅・上』と並行して取組んでいた、“野上彌生子全集”の第十三巻『秀吉と利休』(岩波書店)を読了しました。

近所の古書店で見つけたこの本を読み始めたばかりの頃に、「久しぶりに辞書と首っ引きで読むべき一冊に出逢った」とこの欄で御紹介しておいたのですが、“残念ながら”あまりの面白さにそんな事をする余裕も無いまま一息に読み上げてしまいました。

いやもちろん選び抜かれている語彙と磨き抜かれた文章は、「通り一遍」だったり「ありきたり」なものは一つとして無いのではと思わせる完成度の高さなので、俄かには意味を捉え切れない言葉も多数出て来るのです。

それでも、不明の語彙をそのままにしてでも先へ先へと読み進めないではいられない程、作品自体の持っている「吸引力」というか「読ませる力」みたいなものが強力だった・・・という事なのだと思います。

いずれにせよこれから辞書を傍らに置いて二度、三度と読み返すたびごとに、見落としていた伏線を発見したり全く新しい風景が脳裏に広がったりして、勢いで読んだ今回とはまた違った感動を得られる事になるのでしょう。

長く愉しみ味わい尽くしたい「良書」との出逢いです。

野上彌生子全小説 〈13〉 秀吉と利休

野上彌生子全小説 〈13〉 秀吉と利休