蒼風閑語

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解析入門Ⅴ

やや久しぶりとなる“岩波講座 基礎数学”分冊の中から、藤田宏氏の『解析入門Ⅴ』を読了しました。

これは当該講座所収の『解析入門』5分冊中の最終巻にあたり、後に“岩波基礎数学選書”の1冊として『現代解析入門』というタイトルで単行本化もされたもの。

ちなみに分冊のⅠ~Ⅳ巻までは小平邦彦氏の『解析入門』という事になるのですが、そちらはその選書の方で既に読了済みです。

という訳で、小平氏の本の続きを読む様なつもりで手に取ったのですが、実際に目を通してみると巻頭の「はじめに」で藤田氏自身が述べておられる通り、“やや独立性を増した”内容となっていました。

セレクトされていたトピックは「フーリエ級数・変換」「常微分方程式」「超関数」という、いわば“応用数学三題噺”とでも呼ぶべきベーシックなテーマ。

これらを関数論とルベーグ積分の知識を前提とせず、あくまでも“大掴みに”紹介しつつ“ザックリと”解説して行くというのが本書の主旨でありアウトラインとなっている様でした。

全編に渡ってユニークな「藤田節」が全開でとても面白く読み進められましたが、特に各章の冒頭に置かれたイントロダクション風の小節は何れも秀逸。

話のマクラというのか、読者の気を逸らさない巧みな導入部のおかげで、随分と論旨が明快になっていたのではないかと思います。

まさに“名講義を聴いている様”と形容するのがピッタリ来る、とても明快・軽快な一冊でした。