蒼風閑語

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市民科学者として生きる

3週間ばかり前に神保町の古書店で買い求めていた、高木仁三郎氏1999年の著作『市民科学者として生きる』(岩波新書)を読了しました。

著者の高木氏が、原子核化学の研究者・技術者としての立場から反原発運動家へと転身するに至った経緯や心情及びその背景などを語った、一種モノローグ風の味わいも感じさせる独特の一冊でした。

それにしてもこのタイミングで本書に出逢う事が出来たのは文字通り「僥倖」と言うべきで、現在私達の生活に実質的なダメージを与え続けている原発について、自分自身の問題として考えるためのよすがとなる貴重なメッセージが、全編に亘って満ち溢れています。

特に本書の第8章「わが人生にとっての反原発」の終盤に記された以下の件(くだり)は、「反原発」という“生き方”を改めて考える上で、極めて大きな示唆に富んでいるのではないでしょうか。

 “理想主義者の私は、核のない社会が必ず実現することへの強い確信をもっている。さらにそのことのために本気になれば、私自身が少なくとも一人分の貢献ができるだろうことへ、確信と自信をもっている。だから、私はいつも希望をもって生きていられる。 (中略) 反原発というのは、何かに反対したいという欲求でなく、よりよく生きたいという意欲と希望の表現である”

・・・今こそ広く読まれて欲しい良書だと思います。

市民科学者として生きる (岩波新書)

市民科学者として生きる (岩波新書)