蒼風閑語

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八朔の雪

新年早々に近所の“チェーンストア系新古書店”で買い求めた、高田郁氏2009年の著作『八朔の雪』(ハルキ文庫)を読了しました。

刊行された当時は新聞広告でよく目にして、何よりもそのタイトルに魅力を感じて機会があれば読んでみたいと思っていた一冊でした。

一見して“ライトな歴史もの”といった風情が漂う佇まいなのですが、読中読後の印象は本当に全くその通り。時代劇に設定を借りた人情物のTVドラマを観ている様な感じ・・・といえば、本書の持っているイメージに比較的近いかも知れません。

本文だけだと250ページを少しばかり超える程度のベーシックなボリューム、その中に4編のエピソードが連作風に綴られているのも、ちょうど連続ドラマの放映を4回見た気分。

ところどころでクスリと笑わせながら泣かせるポイントもシッカリと押さえられており、全体に非常にバランスの取れたソツのない作りが特徴的です。

また作中には日本古来の年中行事や料理に関する用語が散りばめられており、これらの言葉を辞書にあたってみながら読み進めるのも面白いのではないかと思います。

ちなみにタイトルにもなっている「八朔(はっさく)」というのは“八月の朔日(さくび)”で旧暦8月1日の事。では「八朔の雪」とは・・・それは読んでのお愉しみ、といったところでしょうか。

アレコレ難しい事を考えず純粋に「お話」を愉しみたいという時にはうってつけの、非常によく出来たエンターテインメント作品と言えそうです。

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)