蒼風閑語

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ザ・フィロソフィ・ジム

スティーブン・ロー著/中山元氏の訳による『考える力をつける哲学問題集』(ちくま学芸文庫)を読了しました。

柔らかいタイトルとポップなカバー・デザインから想像していた通り、有名な哲学的命題と哲学的思考法へ向けてのとても楽しく判り易い手引書でした。

全体は19の小さな章に分かれているのですが各々の内容は概ね独立しており、どこから読み始めても愉しめる構成となっています。

どの章にも興味深い命題がテンコ盛りで退屈する暇を与えないのですけれども、第1章「宇宙はどこからはじまったか?」で提示される “北極の北には何がある” という類比は、無限という概念を考える際の端緒にもなりそうです。

また第6章「考える機械の悲しみ」などは、まるでサイエンス・フィクションのワン・シーンの様なプロットが強い印象と深い余韻を残し、文学的ともいえそうな哀感に満ちています。

第11章「悪さを見抜く色眼鏡」は、昔何かの本で読んだ「心とは何だ?どんな形をして、人間のどこにある?」という問い掛けを思い出しながら読んでいました。

・・・等々、語り始めるとあれこれキリが無い程いろんな事を考えさせられる、というか、考え始めるための小さな「キッカケ」を沢山与えて貰える一冊ではないかと思います。

本書の冒頭部に置かれた「本書の使い方」の中で、著者はこんな風に語っていました。正にこの本を愉しむ為の要諦を集約していると言えるでしょう。

“なによりも忘れてはならないのは、哲学とは一つの営みだということだ。哲学の書物の最高の使い方は、批判的に読みながら、自分の頭で考えて、哲学という活動に実際に参加してみることだ。議論で前提とされていることに疑問のまなざしを向けて、提示されている議論をもう一度、分解して調べてみてほしい。”

考える力をつける哲学問題集 (ちくま学芸文庫)

考える力をつける哲学問題集 (ちくま学芸文庫)