蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

現代読書法

田中菊雄氏1941年の著作を1987年に文庫化した『現代読書法』(講談社学術文庫)を読了しました。

ちょうどひと月ばかり前に同氏の著作『英語研究者のために』(講談社学術文庫)を読んで感銘を受けたところですが、本書では更に一般的な視野に立って広義の「読書」と「学習」の方法を論じています。

全体は34の章から成っており各章は決して長くはないのですけれども、各々の内容はとても濃密で心に留め置くべき金言が満載。一言一句に至るまでジックリと味わい吟味するに相応しいものが選び抜かれています。

 “いかなる日も読書に悪い日はない。いかなる時も読書に悪い時はない。いかなる場所も読書に悪い場所はない。いやしくも書籍のあるところ、いずれの処か明月清風なからんやである。” (第十章「読書と時間の利用法」より)

雨が降ろうが槍が降ろうが読書はせねばならぬし、ひとたび本を開けば他の雑事は全て忘れて耽溺すべきである・・・と冒頭で理想を述べておいて、章末では「一日に1時間、いや30分でよいから読書の時間を取りなさい」と現実的な対処法を諭し、次の様に結論付けます。

 “一日一頁を読むとして一年三百六十五頁に達する。毎日の功というものは何という大きなものであろう。こうして真剣(シーリアス)な読書習慣(リーディング・ハビット)を養うことは一生をいかに幸福にするか知れないのである。” (同章より)

どの章にも読書に対する考え方とその実践方法が、格調高く且つ熱のこもった筆致で綴られており、凡そ本を脇に置く暇(いとま)を与えません。本当に「価値ある一冊」というのはそういうものなのでしょう。

尚、本書には古典籍からの引用が多くやや難易度の高い熟語も頻出するので、大きめの国語辞典と漢和字典を座右に据えてシッカリ取り組む事をお薦めしておきたいと思います。

現代読書法 (講談社学術文庫)

現代読書法 (講談社学術文庫)