蒼風閑語

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アトラス

ホルヘ・ルイス・ボルヘス著/鼓宗氏の訳による2000年の著作『アトラス ― 迷宮のボルヘス』(現代思潮新社)を読了しました。

いや・・・ここは安直に “読み終えた” というよりも、むしろ “味わい終えた” とでも言った方が適切かも知れません。

先だって『エル・アレフ』(平凡社ライブラリー)の読後にも当欄へ書いておいた通り、ストーリーを追うのではなく印象をトレースする読み方が相応しい作品集なので、なかなか「読了!」という感じにはなり難いのですね。

まさに本書の「まえがき」にある如く、

それは写真に飾られた文章や、見出しによる解説が付された写真の羅列ではない。各章がイメージと言葉からなるひとつの単位を有している。

という事になるでしょうか。

マリア・コダーマ婦人の撮影による写真とボルヘスの文章が実に不思議なカタチで融合してある種の「化学反応」を起こしている様な一冊で、読書体験としては類を見ないかなり斬新なものでした。

ここにある写真と文章の数々は、読めば読むほど関係がある様でもあり無い様でもあり・・・といった趣きで、いつまで見比べていてもおよそ飽きるという事がありません。文章では少しばかり説明しづらいところですけれども。

それにしてもボルヘスの文章が持っているこの独特な感触は、一度味わってしまうと本当に病み付きになります。これまでに体験した中で一番近く感じるのはリチャード・パーマー・ジェイムズの書いた歌詞でしょうか。

・・・何れにせよホントにカッコ良くてしかも手強くて言い様もなく魅力的。これからも長く向き合って行きたい作家ではありますねぇ。

アトラス―迷宮のボルヘス (^Etre・エートル叢書)

アトラス―迷宮のボルヘス (^Etre・エートル叢書)

 
エル・アレフ (平凡社ライブラリー)

エル・アレフ (平凡社ライブラリー)