蒼風閑語

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量子色力学とは何か

以前ここで御紹介したE.ブローダの『ボルツマン』(みすず書房)と一緒にネット古書店で買い求めておいた、原康夫氏の『量子色力学とは何か』(丸善)という小冊を読了しました。

お馴染み“岩波講座 現代物理学の基礎”の『量子力学』や『素粒子論』の中で、それなりのページ数を割いて解説されていた量子色力学なのですが、残念ながらその要諦を掴んだとは言い難い状態だったのです。

ところが本書の「はじめに」の部分では、こんな表現でイキナリ量子色力学の“キモ”を取り出してくれていました。

 “陽子や中性子は、基本的な粒子という意味で素粒子とよばれてきたが、現在では「クォーク」という基本的な粒子三個からなる複合粒子だと考えられている。したがって、クォークの間に働く力が基本的な力で、核力は基本的な力ではない。基本的な力の一つである電気力は物体の帯びている電荷の間に働く。これに対して、クォーク間力はクォークの「色電荷」とよばれるものの間に働く。この色電荷の間に働く力の学問が、本書の主題の量子色力学である。”

あくまで平易且つ丁寧に“噛んで含める”様な語り口が原氏の解説の真骨頂でもあるのですが、これから述べる本論の「根っこ」の部分を冒頭でこんなにも明快に提示して頂けると、道の迷い様すら無いというもの。

本書を読み終えて「クォークグルーオン」「カラー(色)」「ハドロン」が漸くおぼろげながらもループ状に繋がって見え始めた気がしています。「ゲージ理論」と「くりこみ」についてもそのアウトラインだけは腑に落ちた感じがしているのですが・・・こちらは気のせいかな?