蒼風閑語

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直観幾何学

一松信氏の『正多面体を解く』(東海大学出版会)に刺激を受けて読み進めていた、ヒルベルトとコーン=フォッセン共著/芹沢正三訳の『直観幾何学』(みすず書房)を読了しました。

一昨年の“東京国際ブックフェア”で購入して以来、中断を重ねては折に触れて紐解いてみるという読み方を繰り返していたのですが、今回丸2年越しでようやく最後のページまで辿り着く事が出来たという訳です。

全体は大きく6つの章から成り、まず第1章が「もっとも単純な曲線と曲面」、続く第2章が正多面体の解説を含む「規則正しい点集合」、第3章が「射影幾何学」で数え上げ幾何学はここ。そして第4章「微分幾何学」のあと第5章に「運動学」を挟んで第6章の「位相幾何学」へという流れ。

中でも物理学との関わりが強くてページの前後を行ったり来たりしながら読んだのは第4章の「微分幾何学」で、そこには変分学と幾何学との関係性を一言でいいあらわしたこんな記述がありました。

変分学は微分幾何学と逆の道を進むわけであって、「微分幾何学が近傍的な性質をその基礎におき、それから図形の全体的な状態についての命題を導き出そうとする」のに対して、「変分学においては、図形を全体として考察したときにあらわれる性質から、この図形の近傍的な性質を導き出そうとする」のである。

な~んだ、これってつまり「足し算と引き算」「掛け算と割り算」「微分積分」なんかと同じ「演算と逆演算」の関係じゃないか・・・と思ってしまえば、変分法だの漸近展開だのといった“名前”にビビったりする必要の無い事がよく判るというもの。

全体を通じて内容は決してヤサシイものではありませんでしたが、こういった“本質を捉えた判り易さ”があるからこそ「名著」として長く読み継がれているのでしょう。

直観幾何学

直観幾何学

 
正多面体を解く (TOKAI LIBRARY)

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