線型不等式とその応用

お馴染み“岩波講座 基礎数学”からの分冊、岩堀長慶氏の『線型不等式とその応用―線型計画法と行列ゲーム―』を読了しました。

著者御自身が「あとがき」の中に書かれているのですが、この線型不等式というテーマについては当該講座の執筆陣の中から「書きたい」という方がおられなかった為、岩堀氏が“俄か勉強でひきうけることに”したのだそうです。

そういった“執筆に至るまでの経緯”を反映してか記述はとてもシンプルで判り易く、主題として取り上げられているリニア・プログラミングやゼロサム・ゲームのみならず、「凸多面体」や「数え上げ組合せ論」の入門書としても有用ではないかと思いました。

本分冊と同様に御専門以外の方が執筆なさった判り易い解説書と言えば、安達忠次氏の『ベクトル解析』（培風館）などを思い出すのですが、これも先生というより“とても良く出来る先輩”に教えて貰っている様な風情のある「優しい」一冊でした。

さて、これを読み終えたからにはやはり同講座で岩堀氏が書かれたもう一つの分冊、『対称群と一般線型群の表現論』にも目を通さない訳には行きません。折を見てこちらにも取り掛かろうと思っているところです。