蒼風閑語

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宇宙移民計画

2週間ばかり前にネット古書店で見つけて買い求めた、A.T.ウルベコフ著/木下高一郎氏の訳による『宇宙移民計画』(講談社ブルーバックス)を読了しました。

これは去る1月14日(木)朝日新聞朝刊に掲載されていた広告特集で、京都大学総長の松本紘(まつもと・ひろし)氏がポーリングやスピノザの著作と共に出合いを語っていらっしゃった一冊です。

原著は1984年にモスクワから、その日本語版である本書は1986年に初版が刊行されているのですが、現在話題となっている有人宇宙ステーションへの長期滞在や、その先にあるスペース・コロニー建設やテラ・フォーミング計画などについての青写真が既に明確に描かれています。

時として「そこまで言い切ってしまってイイのか?」とツッコミを入れたくなる位お話が“具体的に”語られて行くので、今様々な形で見聞きしている宇宙開発に関する情報や場合によってはSF映画のシーンなども思い浮かべながら読み進めると楽しさが倍増。

もともとが旧ソ連で科学教育促進に寄与すべく執筆された「啓蒙書」の類いなので、特に前半については記述がやや教科書風で読みにくいのですが、そこが本書を単なる空想科学書とは一線を画したものにしている由縁でもあるのでしょう。

扱われているトピックがあまりに広汎で上手く要約出来そうも無いので、ここは本書を御紹介下さった総長のお言葉を、件(くだん)の広告特集の中から引用しておく事にしましょう。

 “大学の宇宙研究といえば、プラズマ物理学や磁気嵐などの科学探査的なイメージがあります。それも面白いのですが、根が工学指向の私は「なぜこんなことを」という思いが募るようになりました。そんな時に出合ったのが『宇宙移民計画』という本です。本書では人口が増大した人類の生活環境としての宇宙や、太陽系の資源利用など、宇宙開発の実用的な意義がさまざまな見地から述べられていて、私に勇気を与えてくれました。”