蒼風閑語

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素粒子の世界

鈴木眞彦と釜江常好の両氏による共著で1981年に刊行された、『素粒子の世界』(岩波新書)を読了しました。

決して記述が難解であったり数式が頻出したりする訳では無いのですが、読み始めると程無くそれなりに重厚な内容である事が紙面の端々から見て取れました。

素粒子論と宇宙論を本質的に分かち難いものとして、クォークレプトンニュートリノについて系統立てつつも簡潔に且つ易しく平明に解説して行くというのは、実はかなり“力技的”な技量を必要とする仕事だと思うのですが、本書ではそれがかなり高度な所で結実していた様に思います。

しばらく前に読んだ南部陽一郎氏の『クォーク 第2版』(講談社ブルーバックス)が素粒子物理学の発展史に寄り添う形で記述されていたのに対し、こちらはかなり“理論体系そのもの”に重きを置いた書き方となっていたのが特徴と言えるでしょうか。

内容的にかなり高度な部分まで含むためなのでしょう、巻末には20ページ近くを割いての簡単な「用語解説」も添えられています。

読後感から定義するなら本書は“一般向けの解説書”というよりも、むしろ“易しく書かれた教科書”から数式だけを取り去ったもの、と考えた方がピッタリ来るのかも知れません。

・・・今から凡そ30年前、こんなホネのある新書もあったのですねぇ。