蒼風閑語

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ヤノマミ

TVディレクターの国分拓氏が2ヶ月程前に上梓なさった『ヤノマミ』(日本放送出版協会)を読了しました。

2009年2月NHKハイヴィジョンでの放送を皮切りに、4月には地上波の「NHKスペシャル」で放映、果ては2時間近くに及ぶ「劇場版」まで制作されたという力作ドキュメンタリーの単行本化です。

残念ながら映像の方は何れも未視聴なのですが、ここで描かれるブラジルの北端に近い部分に位置する“ヤノマミ族保護区”にある“ワトリキ集落”での、延べ150日間に渡る原住民との共同生活は、大きなインパクトを伴って読む者の心に迫って来ます。

未開の土地に住まう原住民の特異な生態や習慣については文化人類学的な興味も尽きないのですが、最も興味深く考えさせられるところが大きかったのは彼らの精神性、特に極めて特徴的ともいえるその「死生観」についてでした。

その要諦についてはここでヘタな感想を繰り延べるよりも、集落で最も畏敬を持って崇められているシャーマンのものとして収録されている含蓄に溢れた言葉を、そのまま引用しておく事にしましょう。

 “地上の死は死ではない。/私たちも死ねば精霊となり、天で生きる。/だが、精霊にも寿命がある。/男は最後に蟻や蝿となって地上に戻る。/女は最後にノミやダニになり地上に戻る。/地上で行き、天で精霊として生き、最後に虫となって消える。/それが、定めなのだ。”

面白いです。ぜひ御一読を。

ヤノマミ

ヤノマミ