蒼風閑語

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力学

1997年に刊行された“岩波講座 現代の物理学 (第2版)”の中からその第1巻、大貫義郎・吉田春夫の両氏による共著『力学』を読了しました。

全体は大きく2部に分かれており、大貫氏の手による第Ⅰ部が所謂「解析力学」の解説に充てられ、吉田氏が筆を執られた第Ⅱ部は「運動方程式の解法」の追究に大きく紙幅が割かれています。

“基礎編”と題された第1部では「Lagrange 形式」と「Hamilton 形式」というベーシックな知識を現代的な視点から改めて洗い直し、“展開編”と名付けられた第Ⅱ部では所謂「力学系」を中心とした応用力学の世界へと足を踏み入れて行きます。

無論本書は独立した解説書として読まれるべきものですが、個人的にはV.I.アーノルド著/安藤・蟹江・丹波訳『古典力学の数学的方法』(岩波書店)への手引きというか、ある種のイントロダクションとしても非常に好適な一冊と言えるのではないかと感じました。

解析力学の手法にフィットする新たな語法や概念の導入も随所で試みられており、カオスなどを含む「非線形力学」への架橋となる事を見据えた、非常に先鋭的であり且つ丁寧に書かれた好テキストだと思います。

尚、「運動方程式の数値解法」と題された巻末の「補章」には、シンプレクティック解法についての概略も簡単に紹介されています。

力学 (現代物理学叢書)

力学 (現代物理学叢書)