蒼風閑語

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平行線の公準

小林昭七氏1990年の著作、『ユークリッド幾何から現代幾何へ』(日本評論社)を読了しました。

幾何学複数の書籍で参考図書として取り上げられていたのでずっと気になっていたのですが、今回機会を得てようやく目を通す事が出来たのです。

200ページにも満たないコンパクトな体裁の中に、タイトル通りユークリッド幾何から現代幾何への数学史的な歩みがググッ!と凝縮した形で語られています。

もとよりこのボリュームで長大な「幾何の歴史」を語り尽くすのは不可能な事なので、著者の“テーマをセレクトするセンス”みたいなものが如何無く発揮されるところ。

本書で小林氏がチョイスしているのは「Euclidの幾何」、「非Euclidの幾何」、「Riemann幾何としての双曲幾何」、「Hilbertの幾何」という4つのトピックで、読む者をかなりの高みにまで誘って行く構成です。

数学者が“平行線の公準”を証明するためにどれほど膨大な時間を掛け、また弛まぬ努力を続けて来たのか。その「知的格闘」の歴史をこれでもか!という位徹底的に味わい尽くす事の出来る、かなり手強い半面ある種の不思議な感動を伴う一冊でした。

砂田利一氏の『幾何入門』や『曲面の幾何』(岩波書店)などと相互補完しながら読むと、かなり広大な“幾何ワールド”が眼前に開けて来ると思います。

ユークリッド幾何から現代幾何へ (日評数学選書)

ユークリッド幾何から現代幾何へ (日評数学選書)

 
幾何入門 (現代数学への入門)

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曲面の幾何 (現代数学への入門)

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