蒼風閑語

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代数入門

半年ばかり前に古書店で購入していた上野健爾氏2004年の著作、『代数入門』(岩波書店)を読了しました。

同じ“現代数学への入門”シリーズから砂田利一氏の『幾何入門』を読み終えた際に、引き続いて読みましょうと買い求めておいたもの。ここに来てようやく読み上げる事が出来ました。

全体は大きく二つに分かれており、前半の1~4章は「数と式」をベースにした謂わば“具象的な”代数、後半の5~7章が「集合論」を基礎に置いた群・環・体などの“抽象的な”代数論となっていました。

巻頭の「まえがき」でこの具象から抽象への飛躍について、上野氏はこんな言葉でその本質的な部分を言い表しています。

 “それは、深い宗教心に満ちた宗教曲や華麗なオルガン曲、イタリアへのあこがれを秘めた室内楽曲などのバッハの音楽に慣れ親しんだあとで、未完の「フーガの技法」をはじめて聞くときのとまどいに似ているかもしれない。”

その「フーガの技法」を愉しむウォーミング・アップとしての前半部分、丹念な解説に加え多数収録されている演習問題によって、とてもスムーズな予備知識の導入が図られています。

手を抜かずキチンと手を動かしながら読み進めると、「今勉強しているなぁ」という手応えが小気味良い位に感じられる・・・そんな風に書かれた“頑張る人を裏切らない”秀逸な入門書だと思います。

代数入門 (現代数学への入門)

代数入門 (現代数学への入門)