蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

数論入門

岩波書店より刊行のシリーズ“現代数学への入門”から、山本芳彦氏2003年の著作『数論入門』を読了しました。

同シリーズの単行本からは砂田利一氏の『幾何入門』『曲面の幾何』、上野健爾氏の『代数入門』と読み継いで、本書で都合4冊目となります。

幾何・代数・数論という、数学の大きな流れの中において要諦を為す「3本柱」ともいうべき重要な分科を、同じシリーズの中で互いを密接に関連付けながら愉しむ事が出来たのは大きな収穫でした。

全体の構成は、第1章「有理整数環」、第2章「合同式」、第3章「剰余環」、第4章「平方剰余の相互法則」、第5章「ディリクレ指標」、第6章「2次体の整数論」、第7章「代数体の整数論」、第8章「楕円モジュラー関数」、第9章「楕円曲線」、第10章「超楕円曲線とヤコビ多様体」、という流れ。

1章から3章までは比較的シンプルな展開ですが、続く第4章で前半のヤマ場を迎えると、第6章以降では代数的整数を導入し抽象的な概念へと移行、最終的には現代整数論の鳥羽口まで読者を引き上げて行くという、かなり “勾配率の大きい” 記述となっていました。

随所に挿入された「問」及び各章末に設けられた「演習問題」の質の高さと、それらに取り組んで実際に手を動かしたぶん確実に理解を深める効果を狙った作りは、既読の3冊と同様に “かけた手間隙を決して裏切らない” 極めて良質なものではなかったかと考えています。

数論入門 (現代数学への入門)

数論入門 (現代数学への入門)