蒼風閑語

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幾何入門

先月から少しずつ読み進めていた、砂田利一氏の『幾何入門』(岩波書店)を読了しました。

古典幾何から現代幾何に至るまでの“幾何学の大きな流れ”を、図版による直観的な理解よりも、あくまでも数式による公理的な理解に重きを置いて解説した“格調高い入門書”でした。

実際目を通し始めると確かに幾何学の入門書としては破格に“図の少ない”一冊で、書中に没頭している間はずっと「代数」か「集合」か「数論」の本を読んでいる様な気分になっていました。

それにしても、幾何の有名な定理で「それは図から自明だろ?」と安易に“解ったフリ”をしていたようなものも、改めて「証明してみましょう」と問われてみるとグッと詰まってしまう所が何と多かった事か。

この点について砂田氏は第2章所収のコラムの中で、“図に頼った証明では、気づかないところで公理以外の前提を使っている可能性を否定できない。すなわち、図には先入観も一緒に入り込むからである”と指摘した上で、“「図により明らか」とは言わないで、できるだけ論証の側面を表に出すことにする”と、早い段階で方針を明確にしていました。

さぁ続いては「代数」かな「数論」かな・・・とあれこれ食指の動くところではあるのですが、ここはまず、砂田氏が本書の続編として執筆なさっている『曲面の幾何』(岩波書店)から取り掛かりたいところ。

幾何入門 (現代数学への入門)

幾何入門 (現代数学への入門)