蒼風閑語

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大気化学入門

およそ3ヶ月ほど前に近所の古書店で買い求めた、ダニエル・J・ジェイコブ著/近藤豊氏の訳による『大気化学入門』(東京大学出版会)を読了しました。

気のせいか新刊書店では最近あまり見掛けなくなったなぁ・・・と思っていたのですが、奥付を見ると2002年の刊行から約5年後に当たる2007年の「第2刷」。嬉しい増刷です。

本書を読み進める上で非常に有用で特筆すべきポイントだと思ったのは、翻訳をなさった近藤氏によって本文の随所に挿入されている「訳者註」でしょうか。

単に天下り的な姿勢で原文から日本語への“置き換え”を行うのではなく、原著の誤りや言葉不足による難解さを適宜指摘したうえで、過不足の無い記述での補足を試みています。

しかもこれらが脚註や巻末註ではなく文中に括弧で括った形でインサートされているので視線や思考の流れが妨げられず、最後までとてもスムーズに読みきる事が出来ました。

尚、各章末には本文の内容をより深く理解するための演習問題が多数収録されており、良質な翻訳とも相俟って本書の価値を更に高めているのではないかと感じました。

念入りに書かれた原著に更に細やかな翻訳者の配慮が加わって、結果的にとてもクォリティの高い入門書が生み出された・・・という事になるのかも知れません。

大気化学入門

大気化学入門