蒼風閑語

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フーリエ級数

黒田成俊氏の『関数解析』(共立出版)、加藤敏夫氏の『行列の摂動』(シュプリンガー・フェアラーク東京)に引き続いて読み進めていた、猪狩惺氏1975年の著作『フーリエ級数』(岩波全書283)を読了しました。

関数解析』や『行列の摂動』を読んでいる時にも強く感じていたのですが、ルベーグ積分の基礎的な部分に一通り目を通しているかどうかで、数学書から見えて来る風景が“まるで違ったものになる”のだという事を、本書を読んでいる間にも再確認する事に。

巻頭の「まえがき」で猪狩氏は、フーリエ級数展開というのはそもそもの成り立ちからして、“Lebesgue 積分の完成とあいまって理論的に体系づけられた”のであって、“その美しい理論体系が姿をあらわすのは、Lebesgue 積分の上に組たてられ、代数的、函数解析的、幾何学的手法が十分に駆使された場合”であると、その本質的な特徴を明確にしています。

本書のこの件(くだり)を目にして、まず伊藤清三氏の『ルベーグ積分入門』(裳華房)の通読から始めた「遠回り」が、大きな目で見れば結局は「近道」だったのだという事が、文字通り“身に沁みて”感じられたのでした。

学術書を長く読み続けていると時々やって来る、本の神様からの“嬉しい御褒美”の様なものでしょうか。

フーリエ級数 (岩波全書 283)

フーリエ級数 (岩波全書 283)

 
ルベーグ積分入門 (数学選書 (4))

ルベーグ積分入門 (数学選書 (4))