蒼風閑語

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幾何学と群

ロシアの数学者V.V.ニクリンとI.R.シャファレヴィッチ共著/根上生也氏の訳による1993年の著作『幾何学と群』(シュプリンガー・フェアラーク東京)を読了しました。

これは江沢洋と島和久両氏による共著『群と表現』や砂田利一氏の『幾何入門』(共に岩波書店)などで、共通して「参考図書」の筆頭に掲げられていた一冊です。

実際に読んでみるとさすがにこれらの書籍でチョイスされているだけあって、非常に丁寧かつ明快な解説に大きく見易い図版が添えられた構成は、物理学や化学との繋がりも重視した記述とも相俟って直観的な理解を助けるものとなっています。

内容について一言申し上げておくならば、本書で語られている論旨の「キモ」とでも言うべきものは、第1章の6節に置かれた“幾何構造とは何なのか?”に集約されているといっても過言ではありません。

ここに示されている幾何構造の定義を一つ一つ確認しその意味するところを明らかにして行く事が本書の骨子となり、そのために用意された様々な応用例を“素材として”吟味して行く・・・というのが解説のアウトラインとなっていました。

幾何学代数学と科学との有機的なつながりを“目に見える”カタチで愉しむ事の出来る、なかなかに得難い一冊ではないかと思います。