蒼風閑語

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数学の美しさ

2ヶ月ほど前にネットのバーゲンブック・フェアで買い求めていた、サージ・ラング著/宮本敏雄氏の訳による『数学の美しさを体験しよう ― 三つの公開対話』(森北出版)を読了しました。

1981年から1983年までの3年間に亘(わた)って、パリにある“発見の宮殿”(科学博物館)で行われたという一般向けセミナーの内容を、ラング氏と聴衆との質疑応答をそのまま収めるという形式で1冊にまとめた内容でした。

ここでお題として選ばれていたのは、「素数の分布」「ディオファントスの方程式」「曲面と3次元多様体の分類」という3つのトピック。

土曜日の午後に一般の聴衆を相手に純粋数学の話をするというシチュエーションが、ラング氏のフランクなキャラクターとピッタリと合致した様で、非常に親しみ易く取っつきの良い「数学三題噺」となっていました。

収録されているどの講演においても、「難しくて訳が判らん!」と言われそうなギリギリのところまで聴衆を引き上げて行く手腕が、ただただお見事。もしも今こんなセミナーがどこかで体験出来るとすれば、何を措いてでも参加してみたいところです。

話の至るところに「数学をするという事」「物理をするという事」の本質的な意味合いがちりばめられた、非常に良質な読み物でありまた見事な啓蒙書にもなっている“稀有な一冊”ではないかと思います。

数学の美しさを体験しよう―三つの公開対話

数学の美しさを体験しよう―三つの公開対話