ジャズを超えて
中山康樹氏2000年の著作『マイルス・デイヴィス ― ジャズを超えて』(講談社現代新書)を読了しました。
中山氏の筆による“マイルス新書シリーズ”としては、同氏が2010年に上梓なさった『マイルスの夏、1969』(扶桑社新書)に続いて2冊目の読了という事になります。
『マイルスの夏』がマイルス・デイヴィスにとってエポック・メイキングな年となった1969年だけにスポットを当てた詳細なドキュメントだったのに対し、本書はマイルスの40年以上に渡る音楽活動全体を俯瞰した「通史」となっていました。
内容についてはここで改めて申し述べるまでもなく、かつて“マイルスに最も近い日本人”と呼ばれた音楽ライターとしての面目躍如・・・といったところでしょうか。面白いです。
最初から最後まで一貫して中山氏のマイルスに対する深い愛情と敬意が感じられるのですが、特に最後に添えられた「エピローグ」は読む者の胸を打つ一節で読後に深い余韻を残します。
読後にCDやLPを改めて聞き直したくなるのはもちろん、開いたページからもマイルスの奏でるフレーズが聞こえて来そうな、アーティストの業績を紹介する本としてはほぼ“理想的な”出来栄えの一冊ではないでしょうか。
マイルスをこれから聴き始める方にも既にマイルス信者となられている方にもお薦め出来る、とても優れた「入門書」であり且つ秀逸な「名盤ガイドブック」ではないか・・・とそんな気がしているところです。