蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

半世紀を超えて

昨日は俄か雨が綺麗に上がってくれたのが何だか嬉しくて、少しばかり北風が強かったのですが夕方のひととき神保町まで足を延ばしてみました。

時刻は既に6時を回っており大方の古書店は閉店まであと30分程。均一台をザッと眺めながら歩いていると、馴染みの理工書専門店の店頭で目に留まった茶色い小冊子。

簡単なビニールカバーが巻きつけられており一見して状態が良さそう。近付いて手に取ってみれば本体も殆ど使用感の無い良好なコンディションです。

念の為に奥付をチェックしてみると刊行は1949年で本書は1967年の第19刷。ほぼ毎年の様に増刷を重ねているところからも当時は結構なベストセラーだった事が窺われます。

シンプルでやや教科書チックとも言えそうな装丁に本文は総て旧仮名遣い。稀代の碩学の手による古い古い数学読本は、どうやら前オーナーからとても丁寧な扱いを受けていた様子。

古書に特有とも言えるヤケやシミはおろか、ページの開き癖や捲(めく)り跡すら見られない綺麗な書面は、およそ半世紀近い年月をくぐって来た古本とはとても思われません。

今から45年も前の本なのにまるで新刊の様な顔付で我が家にやって来た一冊、高木貞治氏の有名な数学エッセイ『數の概念』(岩波書店)をつらつらと眺めている弥生の夜です。

数の概念

数の概念