蒼風閑語

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世界の測量

3ヶ月ほど前に神保町で買い求めていた、ダニエル・ケールマン著/瀬川裕司氏の訳による『世界の測量 ― ガウスフンボルトの物語』(三修社)を読了しました。

2008年の刊行当時から新聞広告などで見て気になっていたのですが、今回ようやく全編を読み終えることが出来ました。

サブ・タイトルにもある通り、数学・物理学者のカール・フリードリヒ・ガウス博物学・地理学者のアレクサンダー・フォン・フンボルトという、ほぼ同時代を生きた2人の碩学を主人公にしたフィクションでした。

既によく知られている事ですが本書の文体的特徴のひとつとして、会話文にカギカッコが使われない所謂「間接話法」が採用されている点が挙げられます。

それが本書を個性的なものにしている反面で、ある種の“敷居の高さ・取っ付きの悪さ”を生み出す要因にもなっているのは否めないところかも知れません。

ただ全てを読み終えてみて感じるのは、作者が仕掛けたこの“ちょっとした読みにくさ”のお陰で、普通だと読み飛ばしてしまいそうな会話の細やかな機微までが充分に味わえるのではないかという事。

ボンヤリ読んでいると会話の主体が誰なのかすら見失いそうになってしまうので、いきおい読書スタイルは「ユックリ・ジックリ・丁寧」といったものになるのですが、その分本書と向き合う時間は長くなり、結果的に読書体験自体がより濃密なものになっているのではないか・・・という気がするのです。

ガウスフンボルトの残した業績をもう少し詳しく知るために、高瀬正仁氏の『ガウスの数論 ― 私のガウス』、木村直司氏の編訳による『フンボルト : 自然の諸相』(共にちくま学芸文庫)辺りにも目を通してみたくなって来ました。

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語