無限を求めて
ちょうど1ヶ月程前に神保町の古書店で買い求めていた、M.C.エッシャー著/坂根厳夫氏の訳による『無限を求めて―エッシャー、自作を語る』(朝日選書)を読了しました。
全体は大きく4つのパートに分かれており、構成は第1章「芸術家か版画家か」、第2章が「実現しなかった講演会」、第3章は「四つの趣味」、そして最後の第4章が「内省的なエッシャー像」という流れ。
第1章は、「芸術家」としてよりも職人気質の「版画家」として評価されたがったというエッシャーの人となりを偲ばせる、当時の版画同人誌に掲載されたテキスト4編。
第2章は、1964年に実施が予定されていながらエッシャー自身の健康上の理由によって中止を余儀なくされた講演の、予め準備されていた草稿に基づいたテキスト。当日紹介する予定だったスライド約100点の画像が含まれています。
第3章がいわゆる「平面の正則分割」に関する少しばかり本格的な解説と、その補助的内容を持った小論からなるオムニバス。自作についての作品論風テキストとして最も読み応えのあった章です。
そして最後の第4章が、晩年のエッシャー氏と親交が深かったというヤン・W・フェルミューレン氏による評論・評伝風のエッセイ。作家論としても読み物としても興味深くまた余韻の感じられる内容で、ここから読み始めるのも良いのでは・・・と思わせる好編でした。
本書にはエッシャー氏の作品も図版として多数掲載されていたのですが、やはり大判の画集などでカラー画像をジックリと味わいたくなって来るのが人情。
ここはひとつ、神保町で関連書籍を当ってみることにしましょう。
- 作者: M.C.エッシャー,Mauritz Cornelis Escher,坂根厳夫
- 出版社/メーカー: 朝日新聞
- 発売日: 1994/06
- メディア: 単行本
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