蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

女狐との出逢い

いつもの様に汗を拭き拭き神保町を歩いていた今日の午後、ふと思い立って普段は滅多に中へ入らない音楽書籍の専門店のドアをくぐりました。

入り口脇のジャズ関連書籍から順番に棚模様を眺めて行くと、比較的状態の良い本が多いことに気が付きます。

実際に手にとって見るとスリップも付いたままの新刊が多く価格の方も定価から1割引程度、ちょっとだけサービスした「特価本」といった感じの設定でしょうか。

何冊かを抜き出しては装丁を眺めたりページを繰ってみたりしながら品揃えを検分する事しばし。ややあってから、本と棚板との隙間に横向きに差し込まれている数点の小冊子が目に留まりました。

どれどれと引っ張り出してみれば、“日本ヤナーチェク友の会”という団体が刊行している「ヤナーチェクオペラ対訳シリーズ」なる冊子群。

そういえば先日買い求めたマッケラス指揮ウィーン・フィルによるオペラ全曲は輸入盤だったのでした。リブレットは当然チェコ語から英語への対訳のみなので出来れば日本語訳が欲しいなぁ・・・と思っていたところ。

そこで改めて見てみると、ありました。『ヤナーチェク 歌劇「利口な女狐の物語」 対訳と解説』。僅か150ページにも満たないコンパクト・サイズの中に、数編の作品解説とチェコ語から日本語への対訳が収められています。

しかも冒頭には、吉田秀和氏の評論集『私の好きな曲』(ちくま文庫)の中から当該歌曲を解説した一節が転載されており、これもイントロダクションとしては実に順当かつ適切なセレクションと言えそう。

フラリと入ったお店で文字通り「ドンピシャ」の一冊に突然出逢う。こんな事もマレにあるのが古書店巡りの醍醐味の一つなのです。